DIARYブログ

昨日の続きです

非関税障壁撤廃は日本の国益になる

コメ、麦、乳製品については100%輸入枠どおり輸入している。実利の面からは、アメリカにとって国家貿易は有利だった。逆に、日本の国益としては国家貿易を維持しない方が良かった。

今回アメリカは小麦についても非関税障壁があると主張している。それは国家貿易しか考えられない。アメリカがその廃止を求めてくるなら、素直に応じることが国益となる。
最善の策はコメ関税撤廃

オバマ政権の際のTPP交渉では、日本はミニマムアクセスとは別にアメリカに7万トンの特別枠を設定した。しかし、第一次トランプ政権で行った日米貿易協定の交渉ではアメリカはコメについて何も要求しなかった。当時の安倍政権は外交的な勝利だと打ち上げていたが、私はコメを輸出しているカリフォルニアは民主党の支持が強く、コメの輸出で頑張ってもトランプの再選につながらないからだと指摘した。

コメについて、今回トランプがどれだけ真剣なのか分からない。しかし、共和党の勝利にはつながらないとしても、アメリカの貿易赤字の縮小には少しは役立つ。また、ミニマムアクセス、国家貿易やSBS方式を指していると思われるが、「日本のコメ輸入制度が複雑だ」と批判している。それなら、日本にとっても最善の策はコメの関税撤廃である。関税がゼロなので無税の輸入枠(ミニマムアクセス)は存在しえない。加えて国家貿易やSBS方式もなくなる。

(なお、望ましくないが、次善の策として、関税削減をオファーするなら341円を100円に下げても(73%の削減)カリフォルニア米は輸入されないだろう。この時アメリカに不利になるのでミニマムアクセスは廃止できないが、国家貿易やSBS方式の廃止はオファーできる。)
関税撤廃で食料安全保障を確保できる

減反は生産者が強調して生産を減少することによって実現される価格維持カルテルである。「関税はカルテルの母(The tariff is the Mother of trusts)」という経済学の格言がある。関税によって海外からの競争がなくなるから価格維持カルテルが可能になる。関税がなくなれば減反は維持できなくなり廃止される。3500億円の減反補助金という納税者の負担はなくなり、消費者はコメ価格の大幅な低下というメリットを受ける。

700万トンの生産は1700万トンに拡大し、1000万トンは輸出される。これはいま穀物・大豆輸入に要している15000億円を上回る2兆円の輸出となり、穀物の貿易収支は黒字となる。

シーレーンが破壊され輸入が途絶されるときは、輸出していたコメを食べれば飢餓を免れる。平時の輸出は無償の備蓄の役割を果たす。毎年500億円かけている備蓄米の財政負担は消滅する。
世界に冠たるコメ農業が実現する

減反廃止で米価が下がるので零細な農家はコメ作りをやめて農地を貸しだす。

主業農家に限って直接支払いをすれば、その地代負担能力が上がって農地は主業農家に集積する。規模が拡大してコストが下がり収益が上がるので、農地の出し手に払う地代も上昇する。JA農協を除いて、農業・農村にいる全ての関係者が利益を受ける。明るい農村が生まれる。消費者も減反廃止以上に米価が下がるというメリットを受ける。

今回の異常な米価高騰を除いて、今ではカリフォルニア米との価格差はほとんどなくなり、日本米の方が安くなる時も生じている。国内の消費以上に生産して輸出すれば、その作物の食料自給率は100%を超える。さらに、水田二毛作を復活し麦生産を増やせば、食料自給率は70%以上に上がる。最も効果的な食料安全保障政策は、減反廃止によるコメの増産・輸出である。

減反廃止と規模拡大・コストダウンで競争力が向上したコメ農業の輸出はさらに拡大する。関税ゼロでタイのジャスミン米やパキスタンのバスマティライスの輸入が増えても動じる必要はない。それ以上に輸出すればよいだけだ。農産物の世界でも自動車のように産業内貿易が盛んだ。日本はトヨタ、ホンダを輸出してベンツやフィアットを輸入しているように、アメリカは212万トンのコメ輸出を行いながら、ジャスミン米を中心にタイなどから129万トンの米を輸入している。アメリカではワインや牛肉の貿易も産業内貿易である。
日本のコメはロールスロイス

ディーラーに行って「車をください」という消費者はいない。特定の車種を念頭に置いて特定のディーラーに行くはずである。

「車」という商品がないように、「コメ」という商品もない。コメには、ジャポニカ米(短粒種)、インディカ米(長粒種)があるほか、同じジャポニカ米でも、品質に大きな差がある。インディカ米でも、パキスタン産のバスマッティライス、タイ産のジャスミン米のような高級米と、アフリカ等へ輸出される低級米とは、34倍の価格差がある。

日本のコメは世界に冠たる品質を持つ。自動車で言えば、ベンツどころかロールスロイスである。農業界が主張するように、軽自動車のようなコメと比較して競争できないというのはナンセンスだ。ジャポニカ米の消費が急速に拡大し16000万トンの消費量の4割を占めるようになった中国で、日本産米は中国産ジャポニカ米の1020倍の価格でネット取引されている。その高級米が減反廃止と直接支払いで価格競争力を持つようになれば、鬼に金棒だ。

日本のコメの関税を撤廃することで、アメリカが日本車にかけている24%の関税を撤廃すさせる。これこそが国益を賭けた戦いではないか?

敵はアメリカではない。農政トライアングルだ。

 

 

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